元アスリート・為末大さんの「諦める力~勝てないのは努力が足りないからじゃない」を読みました。今回はその感想です。
為末大「諦める力」を読んで
「諦める」は本来「明らめる」と書くこともでき、「悟る」という言葉に近い意味合いを持つと言います。そこで、本書では「諦める」のイメージを以下のように捉えています。
「自分の才能や能力、置かれた状況などを明らかにしてよく理解し、今、この瞬間にある自分の姿を悟る」
つまりは自分を含めたあらゆる状況を客観的に把握するということです。
状況把握が「諦める」と同義なのに違和感を感じるかもしれません。しかし、実際のところ、何かを諦めるときは、何かを選ぶときであるはずです。つまり、状況を把握した上で「じゃあ、こうしよう」と行動に移った瞬間、そこには「こうしなかった」何かがあるはずで、それを諦めたことになります。
そう考えると、日々の生活の中で誰しもが無意識のうちに多くの諦めていることになります。今日、ラーメンを食べたことで、ハンバーグを食べることを諦めたことになります。明日、仕事に行くことで、仕事をサボることを諦めたことになります。
実は日常茶飯事に行なっている諦め。普段から平然と繰り返しているにも関わらず、意識ある状態で諦めるとき、多くの人はネガティブな感情を持ってしまう。
もっと若いころは「やめる」ことは「諦める」こと、「逃げる」ことだった。そのように定義するとどうしても自分を責めてしまう。
為末さんも18歳のとき、100メートルから400メートルハードルへと種目の転向を行ったときに、「100メートルをやめる=諦める=逃げる」と捉え、大きなストレスを抱えたようです。
しかし、時間の経過とともに考えが整理され、種目転向に対する捉え方に変化が生じました。
多くの人は、手段を諦めることが諦めだと思っている。だが、目的さえ諦めなければ、手段は変えてもいいのではないだろうか。
為末さんが持つ目的とは「勝つこと」でした。そのために、手段を「100メートル」から「400メートルハードル」へと変えた。そう捉え直すことで、100メートルへの挑戦を諦めたことを肯定できるようになったそうです。
「今すぐ腹を満たしたい」という目的がある状況で、調理が必要なハンバーグと3分で食べられるカップラーメンという2つの手段があったとします。ここでカップラーメンを選ぶと、調理する努力を放棄し、ハンバーグを諦めたとになります。カップラーメンで楽に食事を済ませるなんて!みたいなこと言われるかもしれません。
でも、「今すぐ腹を満たしたい」という目的を達成するためには、カップラーメンを選んだ方が確実です。目的を明確にした上で、最適な手段を選択する。これが目的の達成率をあげるために大切な考えたなのです。
最適な手段とは、最小限の努力(エネルギーと言い換えてもいいかも)で最高の結果がえられるものです。楽に目的達成ができる方を選ぶことで、勝率を高めることができます。
極端なことをいえば、勝ちたいから努力をするよりも、さしたる努力をすることなく勝ってしまうフィールドを探すほうが、間違いなく勝率は上がる。
「さしたる努力をすることなく勝ってしまうフィールド」を選ぶことは逃げではく、戦略です。したがって、「諦める」ことも戦略です。
目的の達成、成功、勝利を狭い範囲で考えていると、手段と目的がはっきりせず「諦める=逃げる」になります。自分のやりたいことをより抽象的に捉え直すことで、手段と目的を明確に分け、目的の方にブレないよう重心をおき、手段はフットワークを軽くし様々な選択肢を持った方がいいのかもしれませんね。
以上、為末大さんの「諦める力」の感想でした。
Kindle Unlimited対象なので、会員の方は是非!
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コメント
>さしたる努力をすることなく勝ってしまうフィールドを探すほうが、間違いなく勝率は上がる。
そんなことして勝っても最初のうちは面白いがすぐに飽きる。
才能ある人間に奇襲や知略や若干の非合法的手段でいかにして勝つかに
ゲームの面白さがある。